「一駅手前で降りて歩く」は、日本でいちばん有名な運動アドバイスかもしれません。 そしていま検索すると、出てくる記事のほとんどが「効果がない」と書いています。
その指摘は正しいです。この記事は反論しません。数字を確認したうえで、 まったく別の使い道の話をします。
まず、痩せないという話を認めます
山手線は営業キロ34.5キロ、30駅なので、駅と駅の平均間隔は1.15キロです。 普通の速さで歩けば15分ほど。
体重60キロの人が15分歩いたときの消費は、おおよそ50キロカロリーです。 おにぎり1個が180キロカロリー前後なので、4分の1くらいということになります。
トレーナーが「意味がない」と言うのはこの数字のことで、言い分としてはまっとうです。 体を変えたいなら、平地を15分歩く程度の刺激では足りません。ダイエット目的なら 1日8,000歩から12,000歩、しかも時間で30分以上、というのが標準的な目安です。
一駅分は、その目安のごく一部でしかありません。
なので、体重を落とすために一駅歩くのは、やめたほうがいいと思います。 続かないうえに、続けても数字が動かないからです。
消費カロリーの詳しい計算は ウォーキングの消費カロリーに まとめてあります。
質問がそもそも間違っています
一駅歩くことを「運動」の枠で評価すると、必ず負けます。運動としては小さすぎるからです。
枠を変えます。一駅分とは、毎日その上を通過しているのに、一度も見たことがない 1.15キロの地面のことです。
これは日本の都市に特有の状況です。電車は高架を走るか地下を走ります。改札の中と、 降りた先の目的地は知り尽くしている。その二点をつなぐ地面だけが、10年通っていても 完全な空白のままです。
そしてその1.15キロにあるものは、だいたい決まっています。商店街、路地、個人商店、 古い銭湯、名前を知らない神社、住宅街の抜け道。駅前でも観光地でもない、 検索しても出てこない層です。
面積で見るとこうなります
歩くと、自分の周囲およそ30メートル幅、片側15メートルずつの帯が明らかになります。
一駅分の1.15キロなら、こうです。
1,150 m × 30 m = 34,500 m² = 約0.035 km²
月20日、帰りだけ歩くとして23キロ。ぜんぶ新しい道であれば0.7平方キロメートルほど。 東京23区は627.6平方キロメートルなので、1年続けても数パーセントには届きません。
小さいと感じるはずですが、比較対象を間違えないでください。同じ道を1年往復した場合、 明らかになる面積は初日と同じ0.035平方キロメートルのまま、1ミリも増えません。
一駅歩きが続く理由は、意志ではありません
ここが実は一番おもしろい部分です。
「毎日30分歩く」は続きません。開始も終了も自分で決めるからで、決めるたびに やめる機会が発生します。
一駅歩きにはそれがありません。降りた時点で、歩く以外の選択肢が消えます。 途中でやめても家には着かないので、最後まで歩きます。終点が固定されていて、 中断できない。行動としてはかなり強い形です。
つまり一駅歩きの価値は、消費カロリーではなく、この構造のほうにあります。
4つのやり方
- 行きではなく帰りに。 行きは遅刻の可能性が発生するので、続きません。 帰りは誰も分単位で待っていない、1日で唯一の自由な15分です。
- 毎回違う道を通る。 二つの駅は固定でも、間の道は固定ではありません。 ここが要点で、同じ一駅を20回歩いても、道を変えれば20回とも新しい面積になります。
- 大通りを避ける。 駅と駅は普通、大通りでつながっています。そこは電車から 見えている場所です。一本入った裏道と商店街のほうが、面積あたりの発見量が多いです。
- 二駅にしない。 30分になると天候と荷物で崩れます。15分は雨でも成立する長さです。 続くほうを選んでください。
地図がないと、結局同じ道になります
上の「毎回違う道」が実際にはほぼ実行されません。理由は単純で、何も記録されないからです。 違う道で帰っても15分楽しいだけで、翌週には元の道に戻っています。
歩数計は助けになりません。歩数を数えるだけで、どこを歩いたかには関心がないからです。 同じ道の200回目と、初めての道が、同じ数字になります。
霧の地図はここを変えます。戦略ゲームの仕組みを実際の街に持ち込んだもので、 地図は最初すべて覆われていて、歩くと自分の周りの霧が晴れます。仕組みの詳細は 現実版の戦場の霧に書きました。
Fogbreakerの領域機能は、これを 行政区画ごとのパーセントにします。国、地域、市、区、町の5段階で、それぞれ面積と 自分が晴らした面積と、その割合が出ます。
数字は最初、かなり低いです。それは意図的で、90パーセントから始まる数字には 伸びしろがありませんが、0.4から始まる数字は新しい道を一本通るたびに動きます。
正直に書いておくこと
雨の日と荷物の多い日は無理です。無理な日にやろうとすると習慣ごと壊れるので、 乗ってください。
痩せたいのであれば、この記事の方法では足りません。強度を上げる話は 日本式ウォーキングのほうが役に立ちます。
霧が晴れるのは屋外でGPSが動いているときだけです。ランニングマシンや商業施設は 歩数は増えても地図は変わりません。FogbreakerはiOSとAndroidで無料、領域機能も すべて無料です。
一駅分は、痩せるには小さすぎて、街を知るにはちょうどいい距離です。 そこを取り違えなければ、たぶん一番続く習慣になります。
